この記事で分かること
お家の「血管」って、どこだと思いますか? 答えは、壁の内側や床の下、天井の裏を巡っている配線と配管です。この記事では、中古住宅を買ってリノベーションを考えている方に向けて、ふだん見えない「部屋の裏側」が暮らしやすさをどう決めているのかを、僕の自宅でアイランドキッチンをつくったときの配管の話とあわせてまとめました。
中古住宅を買ってリノベしようとすると、どうしても間取りやキッチン、床や壁の素材に目が向きますよね。僕もそうでした。
でも、自宅をリノベしてみていちばん「ここで暮らしが決まるな」と感じたのは、住み始めたら二度と見ることのない、部屋の裏側でした。暮らしやすさは、見えない層の計画で決まる。
この記事を読み終えるころには、物件を見るときに「見える部分」だけでなく「見えない層」にも目を向ける視点が、少し持てるようになると思います。
目次
- お家の「血管」は、壁の内側・床の下・天井の裏を巡っています
- ルートが整っていれば、見えなくても暮らしは素直に動きます
- 間取りや仕上げは「何をしたいか」、配管や配線は「それを実現できるか」
- キッチンを動かすときに効いてくるのは、排水の勾配と床下の高さ
- 物件を見るときに、少しだけ視点を足してみる
- 僕の自宅で、アイランドキッチンを諦めなかった理由
- まとめ:見えない層の計画が、見える層の希望を形にする
1. お家の「血管」は、壁の内側・床の下・天井の裏を巡っています

壁の内側、床の下、天井の裏。そこには隙間があって、電気の配線や水の配管、空気のダクトが巡っています。
電気や水、空気を家じゅうに届けているという意味で、人の体の血管と同じです。ふだんは目に見えないけれど、暮らしを支えている。住んでいるあいだは、まず目にすることがありません。

仕上げを外して骨組みだけになると、ふだんは見えない部屋の裏側が、こうして表に出てきます。床の上を這っている管も、工事が終われば床の下に隠れて見えなくなります。
2. ルートが整っていれば、見えなくても暮らしは素直に動きます

配線や配管、ダクトのルートがきれいに整っていれば、見えなくても暮らしは素直に動いてくれます。
逆にルートがバラバラだと、どこかに無駄やしわ寄せが出てきます。ふだん意識しない場所だからこそ、気づいたときには直しにくいところでもあります。
だから僕は、部屋の裏側は「工事の前にこそ、落ち着いて考えておきたい場所」だと思っています。
3. 間取りや仕上げは「何をしたいか」、配管や配線は「それを実現できるか」
間取りや仕上げは「何をしたいか」を、配管や配線は「それを実現できるか」を決めている、と僕は考えています。
広いLDKにしたい、キッチンを窓のほうへ動かしたい。そういう希望は、見える層の話です。でも、それが本当にかなうかどうかは、床の下や壁の内側にどんなルートを通せるかにかかっています。
見える層の希望は、見えない層の計画があって初めて形になる。これが、自宅のリノベを通しての実感です。
4. キッチンを動かすときに効いてくるのは、排水の勾配と床下の高さ
水まわりの中でも、とくに気をつけたいのが排水です。排水は水を流すために勾配が必要なので、排水管は少しずつ下がりながら進んでいきます。
つまり、キッチンを今の位置から遠くへ動かすほど排水管の距離が長くなり、そのぶん床下に高さが要ります。

写真の赤と青が給水管、グレーが排水管です。床が張られる前は、こうして管が並んで走っているのが見えます。
床下にどれくらいの高さを取れるかは、建物によって違います。だから「キッチンを動かせるか」は、間取り図を眺めているだけでは決めきれないんです。
5. 物件を見るときに、少しだけ視点を足してみる

中古住宅を見に行くと、どうしても内装の古さや間取りに目が行きます。でも、リノベ前提で買うなら、見えない層が「やりたい暮らしができるかどうか」を左右することがあります。
内見のときは、こんなことを頭の片隅に置いてみてください。
- 床下にどれくらい余裕がありそうか
- 水まわりをどこまで動かせそうか
- 動かしたい場所から、今の排水の位置までどれくらい離れているか
- 天井裏に、配線やダクトを通す余地がありそうか
ここは素人目では判断しにくいところです。買う前の段階で、やりたい暮らしと建物の条件を一緒に照らし合わせておく。それだけで、あとからの「こんなはずじゃなかった」がだいぶ減るんじゃないかと思っています。
なお、購入前のインスペクション(建物状況調査)では、給排水の設備などは基本の対象に入っていません。調査で分かること・分からないことは、築古の家を買う前に。建築士が話す、インスペクションで分かること・分からないことにまとめています。
気になっている物件で「キッチンを動かせそうか」を一緒に見てほしいときは、購入前の相談を申し込むから気軽に声をかけてください。
6. 僕の自宅で、アイランドキッチンを諦めなかった理由

もともと壁付きだったキッチンを、アイランドキッチンにしました。キッチンを部屋の真ん中に出すということは、排水管を壁際から遠くまで引っぱってくる、ということです。
正直、普通の設計、普通の工務店なら難しいと言われて諦めるような配管の長さだったと思います。

それでも、この家でどう過ごしたいかを先に決めてから、配管のルートと床下の高さを逆算しました。
見た目のためのアイランドではなく、暮らし方のためのアイランドだったので、ここは譲れなかったんです。
7. まとめ:見えない層の計画が、見える層の希望を形にする
お家の「血管」は、壁の内側や床の下、天井の裏を巡る配線と配管です。ふだんは見えないけれど、電気や水、空気を家じゅうに届けて、暮らしを支えています。
間取りや仕上げは「何をしたいか」を、配管や配線は「それを実現できるか」を決めています。キッチンのような水まわりを動かすなら、排水の勾配と床下の高さがポイントになります。
物件を見るときは、見える部分に加えて、見えない層にも少しだけ目を向けてみてください。そして最後に残るのが、「この建物で、自分のやりたい暮らしはかなうのか」という問いです。ここは、一人だと判断しにくいところです。
購入前のご相談について
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この記事を書いた人
宮城 洋之|meta architecture project(m-ap)
一級建築士・宅地建物取引士・FP2級。建築設計、まちづくり、既存建物の活用に取り組んでいます。自邸として町田市に中古マンションを購入し、リノベーションを実践。4mの大きなアイランドキッチンと、骨董市で集めたお気に入りの食器たちに囲まれて暮らしています。
